
こんにちは。管理職リーマンのノジソウタ(@nojisoufreedom)です。
正社員と非正規社員の待遇格差を是正すると言われている「同一労働同一賃金」の施行まで、あと2ヶ月を切ろうとしています。(中小企業は2021年4月から)
今回の法律の改正が、本来の趣旨や意味を保った法改正となるのか?
はたまた、形だけのなんとなくの法改正となるのか?
「全ての働く人達に希望を」というスローガンを掲げている私としては、この「同一労働同一賃金」には非常に注目しております。
そして、人材サービス業界に携わるひとりのビジネスパーソンとして、同一労働同一賃金が始まる事によって「これから起きること予測5選」をお届けしたいと思います。
同一労働同一賃金の法改正対応ができていない企業が多い

まず冒頭から衝撃のお話をさせていただきます。
大手求人広告会社のエン・ジャパンが行った働き方改革の実態調査によると(従業員数1000人未満の企業の人事担当者へのヒアリング調査)
2020年1月15日現在で「法改正に対応できていない」と答えた企業は半分以上という結果になりました。

「働き方改革法」実態調査より
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2020/21007.html
「すべて対応を完了した」と回答した企業が14%
「おおむね対応を完了した」と回答した企業が30%
合計しても対応が完了している企業は44%にしかすぎません。
そして「あまり対応できていない」と回答した企業が35%
「まったく対応できていない」と回答した企業が13%
「あまり対応できていない」「まったく対応できていない」「分からない」の合計は54%に上ります。
もし、このまま4月を迎えてしまうと、多くの企業がリスクを抱えたまま走り出す事になってしまいます。
民事訴訟が多くなる

例えばもし、非正規社員が正社員との格差がある事に気づいたとします。
非正規社員 「この格差はどう考えてもおかしいでしょ?!」と
会社側と言い争った場合、最終的には裁判で決着をつけることになりますが、今回の法改正では非正規社員が正社員との待遇格差の内容やその理由について会社に問うことが出来ます。
使用者に対して「なんで?こうなってるの?」と説明を求めた場合、使用者はそれをしっかりと説明しなくてはならないのです。
それでも使用者側の説明に「いや、それでは納得ができない!」となった場合は、労働局の個別労使紛争を解決するための調停を求めることができます。
もし使用者側がしっかりとした説明もせずに、そして調停でも決着がつかず、訴訟となった場合には裁判所から「正規社員との待遇格差は不合理であった」という烙印を押される可能性が高くなるのです。
現時点で同一労働同一賃金について「対応が完了している」答えた企業はわずか44%で半数を切っている状況です。
今や法律関係の知識がない労働者でも、インターネットやSNSで何でも調べられる時代です。このまま4月を迎えると、民事的な訴訟が多くなる事は間違い無いでしょう。
正社員の手当廃止と縮小が起きる

正社員と非正規社員の格差の原因となっていた各種手当の廃止と縮小が起きます。
正社員にはこれまで非正規社員には払っていなかった手当がたくさんあります。
「家族手当」「世帯主手当」「住宅手当」「食事手当」「役職手当」「皆勤手当」「資格手当」などなど。たくさんの手当が存在しています。
同一労働同一賃金の影響によって、正社員の手当が簡素化されていく事は間違い無いでしょう。
これまで正社員だけに支払っていた手当を非正規社員にそのまま単純に払うとなると、会社にとっては単純に大幅なコストアップになります。
そうなれば、取る手段はひとつ、手当をなるべく無くして行くしかないのです。
日本企業から「手当」という物がなくなる事もそう遠くない未来だと考えます。
詳しい事は下記の記事をご参照ください。
-
働く人の7割がまだ知らない【同一労働同一賃金のメリット・デメリット2020】
続きを見る
メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への切り替えが進む


長く続いてきた日本型の雇用も、いよいよ終焉を迎える事になります。
まず「メンバーシップ型雇用」とは、年功序列や終身雇用を前提として採用された雇用の形です。典型的な日本特有の雇用となります。
そして、「ジョブ型雇用」とは、仕事に対して人が割り当てられるという考え方の雇用の形です。こちらはまさに欧米型の雇用となります。
これからは日本特有の雇用から欧米型への切り替えが進んでいきます。完全にジョブ型の雇用だけになるという事ではありませんが、増えていく事は間違いないでしょう。
年齢や勤続年数に左右のされない、職務内容やどんな役割についてるかで決まる賃金制度へと転換が起きていきます。
「日本型雇用制度には若手の雇用率や会社への忠誠度を高める利点はある。ただ経済のグローバル化やデジタル化で業界そのものが変化している時代に、(年功序列賃金など)従来の日本型雇用だけでは対応できない。その意味で、職務を明確にする『ジョブ型雇用』の拡充を提案した」
日本経済新聞より引用
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO54980270Z20C20A1EE8000/
経団連の経営労働政策特別委員長である大橋徹二氏の発言ですが、経団連がジョブ型雇用の拡充を望んでいるということですね。
日本型雇用だけだとグローバル化や、この変化の激しい時代についていけないという事です。
昇格・昇級の基準が厳しくなる


昇格の基準が厳しくなる。これは昇給も含めて厳しくなります。
ジョブ型雇用でも触れてますが、同一労働同一賃金では仕事ごとに賃金が決まっていく事になるので、同じ仕事を長く続けているだけでは昇格や昇給はあり得ないという事になります。
しかし、仕事の責任の範囲が広がった時には昇格や昇給するという事はあります。
ただし年功序列という言葉がオワコン化していくので、「長く勤めたから昇格!」「彼は係長を5年やってるから課長!」みたいな「感覚的な人事」は無くなるという事ですね。
男女格差がなくなっていく


仕事において男女の格差は、今現在も多く存在しています。
同じ正社員で同時期に入社したのに、出世のチャンスがあるのは圧倒的に男性です。
女性は出産という大きなライフイベントがあり、そういった背景も考えると、急に辞める事になったり、産休育休に入って1年以上職場に復帰できないという事もあります。
そういった事情により、男性にチャンスが訪れやすい世の中であるかと思います。
この仕事においての男女格差は「同一労働同一賃金」によって徐々に格差が消滅して行くものと予想されます。
正規と非正規の不合理な待遇格差が解消されるに伴い、これまで曖昧になっていた男女ごとの給与の格差という物も解消されて行くはずです。
誰もが性別に関わらず平等にチャンスのある時代になることを節に願います。
まとめ
「同一労働同一賃金」の施行までいよいよ2ヶ月を切ろうとしています。はっきり言えばもう時間がない状況です。
この法改正に対してほとんどの企業が頭を抱えてるのが実情だと思います。
私自身も、企業の人事担当者、人材業界に携わっている人間として、正直言えば「かなり面倒な制度」という認識を持っており、この制度に対応して行く為に、たくさんの時間を取られてきました。
世の中の人事担当者、経営者の方は皆、同じような思いを抱いているのではないでしょうか?
法改正対応がかなり遅れているのも、こういったネガティブな事情から来るものではないかと思います。
「人口減少」「少子高齢化」といった大きな問題を抱えている日本社会。
そして一人当たりの生産性が下がり続けている日本。
働き方改革、同一労働同一賃金でどこまで大きく変わって行くかは、今現在は不透明ではありますが、日本社会に蔓延っていた「感覚的なモノ」を排除するには良い機会だと思っています。
長期間働いてるから、いつも遅くまで働いてるから、良い大学を出ているから、付き合いが良いから、愛想が良いから、男性だから、などなど。
そんな「感覚的な評価」で、その人の給与が決められていたのがこれまでの日本社会です。
今回の法改正をきっかけに日本社会がより発展して行くこと、そして「全ての働く人たちが希望を持てる」そんな社会になって行くことを強く願っています。