
落合陽一さんの書籍「2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望」をご紹介致します。
日本という国を世界的な視点で見る事、そして日本人として今後どうあるべきなのか…
何ができるのか…という事を深く考えさせられる書籍です。
SDGsの概要と策定の背景
「SDGsとは?」(エスディージーズ)
Sustainable Development Goalsの略
持続可能な開発目標、持続可能な世界の実現、国連主導で掲げた開発目標です。
2030年に向けた具体的な行動指針となります。
SDGsの17のゴールについて
- 貧困をなくそう
- 飢饉をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊さを守ろう
- 陸の豊さを守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
以上、17の行動目標となっています。
MDGsとは
SDGsが策定される背景となったのは、2010年から2015年にかけて進められた「MDGs」(ミレニアム開発目標)の失敗がきっかけとなっています。
国連やNGOなどを中心に推進されましたが、掲げた目標のほとんどが達成されないままで終わりました。
【目標1】
2015年までにすべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする
【実績】
11%上昇(上がったものの達成にはならず)
【目標2】
2015年までに5歳未満児の死亡率を3分2減少させる
【実績】
53%の減少(3分の2に届かず)
【目標3】
2015年までに妊産婦死亡率を4分の3減少させる
【実績】
45%の減少(4分の3に届かず)
この「MDGs」での反省点を活かして、その理念や方法を継承する枠組みとして作られたのが「SDGs」です。
感想と解説【ややネタバレあり】

日本にとってのSDGs
経済的にも豊かな日本にいる私たちにとって、「SDGs」17のゴールは実感しづらい内容だと思います。
日々の生活の中で食べる物に困ることはありませんし、義務教育制度があり、最低限の教育を受ける事ができます。
水も食料も美味しくて安全ですし、ウォシュレット付きのトイレが普及していたり、次々に新しいビルやお店も出来ています。
モノやサービスで溢れた環境で暮らしている私たちにとって、SDGsの理念は浸透しづらいのが現状ではないかと思います。著者の落合陽一さんも本の中で以下のように語っています。
現代の日本はサスティナブルな考え方が希薄になっているのではないか、ということです。
※2030年の世界地図帳より抜粋
現代の日本では公共に対して社会を守ろうという感覚が薄いような気がします。
それは昨今のSNS上の炎上の構図や、一度失敗した有名人を執拗に追い込むような場面からも見てとれるのではないでしょうか
SNS上のつながりをひとつの社会と捉えて、できるだけ皆が快適になるように努力しようと振る舞っている人はどれだけいるでしょうか
本書を通して世界的な視点で日本社会を見た時に、日本人は「社会を守る」という感覚が薄いという点。
何とも情けなくて恥ずかしい感情を抱きました。
そして飢饉の面では、日本では食品ロスが大きな問題になっています。
食品ロスとは、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品の事です。
日本では、年間2,759万トンの食品廃棄物等が出されています。
※消費者庁ホームページより抜粋
このうち、まだ食べられるのに廃棄される食品いわゆる「食品ロス」は643万トン。
これは、世界中で飢饉に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量(平成29年で年間約380万トン)の1.7倍に相当します。
この消費者庁の出している数字をもとに、日本国民一人当たりで換算した場合、お茶碗約一杯分の食べ物が毎日捨てられている事になるそうです。
こういった事実もなかなか実感できていない人が多いのではないでしょうか
地球の能力の限界がきている
日本は水資源が豊富というイメージがありますが、実は外国からの輸入にかなり頼っているというのが実情です。
国内の農産物や畜産物を生産する際には、多くの水が使われており、その多くの水は実は外国からの輸入がほとんどです。
日本では海外から大量に農産物や畜産物を輸入しているので、それを通じて大量のバーチャルウォーター(仮想水)が入ってきています。
つまり、かなり海外に依存しているという事なのです。
そして世界では水が不足している地域が多くある中ですが世界の水資源問題を解決していく上で、バーチャルウォーターに依存している日本は大きな責任を抱えていると言えると思います。
そして、水だけではなく、電気エネルギーなどの燃料の問題、紙や木材原料などを作る為の森林伐採、排出された二酸化炭素を吸収するための緑地などの自然減少、廃棄物などを浄化する為の土地問題など
人間が生きる為、そして豊かになる為の経済活動によって、地球の到るところを痛めつけています。
こういった状況が、本書では既に地球の能力を超えてしまっていると言われています。
現在の世界全体の人々の生活を支えるには、地球が1.7個分必要といわれており、すでに地球が吸収・浄化できる能力を超えてしまっているのです。
※2030年の世界地図帳より抜粋
そういった地球への環境負荷が、昨今起きている様々な異常気象を生んでおり、このまま何もせずにいけば更に深刻な事になっていく可能性があります。
まとめ:2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望

日本は今現在、GDP3位の経済大国ですが、SDGsにおいて大きな使命と責任を抱えていると思います。
少子高齢化を世界で一番はじめに体験していく中で、日本は他国に追い抜いかれる状況が続くことになると思います。
環境問題だけでなく、ジェンダーの問題、国の文化的価値をどう発展させて行くのかといった問題まで。
EU、アメリカ、中国が戦略的に動き始めている中、日本はどのような立ち位置で「SDGs」と向き合って行くのか。
本書を通して、多くの日本国民が「SDGs」に対して興味を示して、実際に行動していける世の中になって欲しいと願っています。