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派遣社員の同一労働同一賃金!2020年4月【正規と非正規の格差はなくなるか】

2019年8月16日

派遣社員の同一労働同一賃金!2020年4月【正規と非正規の格差はなくなるか】

こんにちは。人材業界で管理職をしているノジソウ(@nojisoufreedom)です。

 

2020年4月1日から全国で一斉に開始される、同一労働同一賃金のパートタイム・有期雇用労働法について触れていきます。


同一労働同一賃金については、労働局をはじめとする国の行政機関ですら、まだ足もとがフラフラしているような状態であり、曖昧な部分も多いですし、メディアでも偏った報道があったりと、人材業界にいる人間としてはこんなんで果たして良い方向に行くのか?と、ハラハラしているところですが、あらためての概要説明と、人材業界の健全化へのメッセージとして本記事を執筆しました。



この法改正が正規雇用・非正規雇用、全ての働く皆様にとってプラスになる改正になって欲しいと切に願っております。

 

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同一労働同一賃金の主旨

同一労働同一賃金の主旨

同一労働同一賃金の主旨とは同じ仕事をする正規雇用の従業員と、派遣社員も含めた非正規雇用の従業員との賃金格差をなくすこと、また不合理な待遇格差をなくすことが目的の法改正となっています。



簡単に説明させて頂くと、派遣先の正規雇用従業員に交通費があって、賞与があり、食事手当がありということであれば、派遣社員を含めた非正規雇用の従業員も交通費があって、賞与があり、食事手当ありでないと「法律違反になりますよ」という内容となります。


特に派遣社員はもともと時給設定が高めで、「交通費なし」が当たり前でしたから、ようやくですが待遇改善に動き出したなといった感じではあります。


ちなみにパートタイム・有期雇用労働法における同一労働同一賃金は
大手企業は2020年4月1日から法律が適用され
中小企業は2021年4月1日から法律の適用がされます。
(派遣社員の同一労働同一賃金は大中小問わず、2020年4月1日から施行)


派遣社員においては「雇用主である派遣元」と「仕事をする派遣先」の二者に分かれている兼ね合いで、派遣元が二つの方式のどちらかを選択して管理・運用していく事になります。


その二つの方式について説明していきたいと思います。

 

 

派遣先均等均衡方式

派遣先均等均衡方式とは、派遣社員の待遇面を、派遣先従業員の待遇と均等・均衡になるように設定する方式となります。



派遣先従業員と同一の業務で、業務内容の変更範囲や配置転換の範囲も同じ派遣社員については、派遣先従業員と同一の賃金に設定する必要があります。



派遣先均等均衡方式を採用する場合には、派遣先従業員に住宅手当が支給されているのに、同じ仕事をする派遣社員には住宅手当の支給がない場合は法律違反となります。そのため、住宅手当が支給されている派遣先に派遣する場合は派遣社員にも住宅手当の支給が必要になります。



今後もし派遣先が変更となった場合は、新たな派遣先で食事手当が支給されているのであれば、今度は派遣社員にも食事手当を支給することが必要となります。


派遣先均等均衡方式では、派遣先が変更されるたびに派遣社員に支給する手当の項目などを変更していくことが必要になります。



また、派遣先均等均衡方式では派遣先の比較対象労働者となる方の給与条件や福利厚生といった一般的には社外秘となる情報の開示が必要となりますので、派遣元への情報開示などを考えると派遣先企業にとっては大きな手間になるかもしれません。

労使協定方式

労使協定方式は、厚生労働省が毎年7月頃に発表する局長通知で決められた賃金額以上にすることを定める労使協定を派遣元企業の労働者代表と取り交わすことにより対応する方式となります。



労使協定方式では、「賃金構造基本統計調査」か「職業安定業務統計」のどちらかの賃金テーブルを採用する必要があります。


いわゆる職種ごとの世間一般の労働者の賃金と同じ賃金にするということになります。



その為、たとえ派遣先の異動があっても派遣社員の賃金を検討しなおす必要はないということになります。



ただし、「労使協定方式」は、派遣会社の労働者代表が労使協定の締結に同意しなければ採用することができませんので、労働者代表に協力してもらえるかどうかが重要なポイントになります。



労使協定で重要になるのが、「厚生労働省が職種ごとに毎年定める賃金以上」というとことです。



具体的には、①基本給・賞与・手当等、②通勤手当、③退職金にわけて、派遣社員に支給すべき金額の基準を厚生労働省が定めているので、それ以上の賃金を派遣社員に支給することを労使協定で定めることが義務付けられています。

 

労使協定方式では派遣先の同じ業務をしている正社員とは待遇が違くなりますので、この考え方自体が同一労働同一賃金ではないという矛盾が生まれますね。

賃金の考え方について

 2020年4月から非正規雇用の労働者にも賞与や退職金がもらえるなんてニュースが取り上げられてますが、その賃金の考え方について触れていきます。

 

①   基本給と賞与について
基本給、賞与、手当等の金額は局長通知によって示されるのでその金額を基準にします。

ここでいう賞与の金額については、正規雇用の従業員と同額でないといけないという事はなく、もちろん勤続年数や仕事の責任の範囲によって、金額には差がついても法的には問題はないです。なので、正規社員と同額もらえるといった解釈は間違ったものとなります。


 ②   通勤交通費
通勤交通費についてですが、2つの方法があります。

・1時間あたり72円を支給(これも局長通知で定められます)
1日8時間労働している労働者であれば1日576円を支給することになります。

・通勤交通費の実費支給 


③   退職金
退職金についてですが、基本給・賞与・手当等を含めた金額(※交通費は別になる)の6%を「退職金」として支給しなければなりません。

例えば計算した基本給の時給が1,600円であれば1時間あたり96円の退職金支払いが必要になります。
そこに交通費72円をプラスすると合計で時給1768円を支給することになります。


 退職金支払いについては3つのケースがあります。
①   一般賃金に6%上乗せして、退職金を前払い方式で支払っていくのか
②   勤続年数などによって決まる一般的な退職金制度を採用するのか
③   中小企業退職金共済等への加入の方法をとるのか

を派遣元企業としては検討していく必要があると思います。 

スタッフのスキルレベルにより賃金が変動する

賃金テーブルによって0年次、1年次、2年次、3年次といった各年次レベルの賃金設定があります。

基準値に能力・経験調整指数を乗じた値で、同じ職務の内容であったとしても、その経験の蓄積・能力の向上があると認められた場合には、年次レベルが上がっていき賃金が上がるシステムとなります。

これまでは1年経過したから時給UPを検討しようといった事が当たり前でしたが、今後は経験年数ではなく能力向上があると認められた場合に賃金UPするという、評価制度へと変わっていきます。

しかしながら派遣社員は有期のままであれば、最長で3年までの契約となるのでグングン年次レベルが上がっていくという事は極めて難しいと考えます。

契約開始時期の注意

大手企業においては2020年4月1日から法律適用となります。
今回の法改正は経過措置がないので、既に締結している契約期間に関わらず、2020年4月1日から一斉に契約内容を変更しなくてはなりません。

その為、現在の契約が有効なのは2020年3月末までとなりますので、更新手続きなどを考えると派遣元は来年の2月には4月からの方向性をしっかりと定めておく必要があります。

派遣会社・派遣先の動向について

大手の派遣会社においてはこのタイミングで値上げ交渉に踏み出しています。

大手は基本的には労使協定方式での提案が多いようで、労使協定方式であれば値上げは必然かと思いますが、ここぞとばかりに強気に単価交渉を進めている会社が多いようで、値上げ幅としても10%~15%程度の交渉をしているようです。

この大手派遣会社による値上げ活動と、日経が出した下記の偏った記事のおかげで派遣先企業は同一労働同一賃金について、だいぶネガティブにとらえるようになっています。


「初年度より3割上げ」も「3年で3割上げ」も、どちらについても、確約された話ではなく、スタッフの能力によって年次レベルは決められるので、こんなむちゃくちゃな事実はないのに、3割上げという言葉がかなり強調されてしまったことで派遣会社を利用する派遣先からはこんなコメントも出てきました。


「値上げをするならば、直接雇用に切替えていきます。」
「今後は派遣社員は減らしていく方針です。」

と言った声が派遣先から聞こえるようになりました。

非正規の待遇を改善する為の法律が、雇用の機会を奪ってしまうような方向に行ってしまうのは何だかとても切ない気持ちです。

 

 

この法改正は労働者の為に行われるもの

同一労働同一賃金によって、派遣社員を含めた非正規雇用労働者には、これまで無かった交通費・賞与・退職金といったものが支払われるようになります。

こういった面から考えても、コストアップは必然になるかと思いますが、これは冒頭にあったとおり、非正規雇用の労働者の待遇改善を考えれば当たり前のことだと思います。

派遣社員を受け入れていた企業の多くは、雇用リスクを背負わずに社会保険や有給休暇は派遣会社が負担して、自社で社員を雇うよりも安く、業績や都合が悪くなったら契約を打ち切れる。
その後の補償や責任はすべて派遣元任せです。

このように都合よく受け入れをしてきた事実もあると思います。

そして派遣元に限って言えば、未だにこんな派遣会社があると言います。

「社会保険や雇用保険に入れない」
「有給休暇がないんです」
「健康診断を受けたことないです」
「給料が働いた時間と毎月合わないんです」

このような派遣会社はなんの為に人材ビジネスをしているのでしょうか?
中間搾取と言われても仕方のない会社があることも紛れもない事実なのです。

人材業界がもっとクリーンに、更によくなっていく為に、この同一労働同一賃金を通して、悪質な派遣会社の淘汰が進み、スタッフの為に、努力をしている良質な派遣会社が更に洗練されていくきっかけとなることで、この多様化の時代に社会的存在価値を高めていくチャンスになると確信をしています。

  • この記事を書いた人

さとり

自称ミニマリスト。ブロガー歴4年。買ってよかったお気に入りアイテムをレビューしたり、自分の体験談などをブログに綴っています。